メルカリAds PdMが語る、自動入札の“中身”
自動入札は「逆算」ではない
メルカリAdsの入札ロジックの本質
手動でCPCを調整する従来の運用から、機械学習による最適化へ。メルカリAdsの自動入札は、その転換を実現する機能です。

株式会社メルカリ Mercari Ads Product Manager Hongli Zhao
自動入札は“目標CPAから逆算してCPCを出しているだけ”と思われることがあります。でも実際は、広告が表示されるたびに、そのユーザーがコンバージョンに至る確率を予測し、その期待値に基づいて入札額を決めているのです。
具体的には、入札価格は以下のように算出されます。
入札価格(Bid Price)=目標CPA×pCVR(予測コンバージョン率)
pCVRとは「この広告がクリックされた場合、どれくらいの確率でコンバージョンに至るか」を機械学習モデルが予測した値です。数式自体はシンプルですが、このpCVRを何のデータで予測しているかが、広告プラットフォームごとの成果の差を生む本質です。
メルカリだけのデータ 購買プラットフォームならではの予測精度
なぜメルカリAdsのpCVRは、他と違うのか
多くの広告プラットフォームは、ユーザーの検索履歴や閲覧行動をもとにターゲティングを行っています。「この人はスニーカーを検索した→スニーカーに興味がある」という推定です。
しかし、「興味がある」と「実際に買う」は全く違います。
メルカリは月間2,800万人以上が利用するマーケットプレイスであり、日々実際の購買行動が起きています。メルカリAdsの自動入札は、この購買データを使ってpCVRを予測しています。
検索履歴から“興味がある”ことは分かります。でも、“本当に買うかどうか”までは分かりません。メルカリでは実際の購買が毎日起きているので、“どういう人が、どんな商品を、いくらなら買うか”を事実ベースで学習しています。これが予測精度の根本的な違いです。
購買データがメルカリAdsの最大の武器
| 一般的なプラットフォーム | メルカリAds | |
|---|---|---|
| 分かること | 「スニーカーを検索した」「商品ページを見た」 | 「スニーカーを\12,000で購入した」「月に2回、同カテゴリの商品を買っている」 |
| 予測の質 | 「興味がありそう」(推定) | 「購買意欲がある」(事実ベース) |
メルカリには実際に何を買ったか、いくら払ったか、どのくらいの頻度で購入しているのかのデータがあります。これにより、「興味関心」ではなく「購買行動の傾向」に基づいた高精度な予測が可能になります。
購買意向シグナル “今まさに買おうとしている人”を捕捉
メルカリのアプリ内では、購買に至る前に特有の行動パターンが数多く存在します。例えば
- 「いいね」:商品への関心を示すアクション
- 「コメント」:商品に対する能動的なアプローチ
これらは代表的なシグナルの一部ですが、いずれも購買の直前に現れる行動である点が共通しています。
これらの行動は、“検索した”よりもはるかに強い購買意欲のシグナルです。今まさに買おうとしている人にリーチできるのが、マーケットプレイスのデータを持つメルカリAdsの強みです。
eKYC本人認証データによる属性の確かさ
| 一般的なプラットフォーム | メルカリAds | |
|---|---|---|
| 年齢・性別 | 自己申告 or Cookie推定 | 本人確認(eKYC)ベース |
| 精度 | 推定(実際とは異なる可能性) | 認証済み(正確) |
メルカリではeKYC(本人確認)が導入されているため、年齢や性別といった属性情報が自己申告や推定ではなく、本人認証ベースのデータに基づいています。ターゲティング精度の土台が他のプラットフォームとは異なります。
自動入札だからできること 手動ではたどり着けない最適化
手動運用との最大の違いは、ユーザーと広告の組み合わせごとに、購買データに基づいた入札判断ができることです。
①オークション単位の動的入札制御
手動運用では、広告グループ単位で一律のCPCを設定します。自動入札では、ユーザーがメルカリで商品を検索・閲覧するたびにオークションが発生し、そのユーザーの購買データと広告の特徴をかけ合わせてpCVRを予測し、入札額をリアルタイムに決定します。
ユーザー×広告の組み合わせは膨大であり、この粒度の最適化を手動で行なうことは物理的に不可能です。
②運用工数の削減
入札単価の調整作業から解放されることで、運用者は戦略設計やクリエイティブの改善に集中できます。
運用者の方には、入札調整の作業から解放されて、戦略設計やクリエイティブの改善に集中してほしい。自動入札は、そのための基盤です。
自動入札の効果を最大化する運用方法

学習フェーズ なぜ約14日間が必要なのか
自動入札に切り替えた直後、パフォーマンスが一時的に不安定になるケースがあります。これは、pCVRの予測精度がまだ安定していない「学習フェーズ」にあるためです。
学習フェーズ(約14日間)
・クリック/CVデータを蓄積中
・予測の精度が安定するまでに時間がかかる
・十分なデータに達するまで配信をブースト
最適化フェーズ
・pCVRの予測精度が安定
・成果の良い広告に高CPCを自動配分
・無駄な配信が抑制される
学習期間中に大きな設定変更を行うと、モデルがリセットされる可能性があります。アルゴリズムに”考える時間”を与えることが、最終的な成果を最大化するコツです。
自動入札を活かすための運用ガイドライン
日予算の目安
| 広告種別 | 推奨日予算 | 理由 |
|---|---|---|
| Product Ads(商品広告) | 目標CPAの10倍以上 | 商品数が多く、広告グループあたりのデータ分散を補うため |
| Infeed / Display Ads | 目標CPAの5倍以上 | 学習期間中に十分なクリック・CVデータを蓄積するため |
予算が小さすぎると、機械学習モデルが有意なデータを得られず、学習期間が長引いたり予測精度が安定しない原因になります。
設定変更のルール
| 項目 | 変更上限(1回あたり) | 注意点 |
|---|---|---|
| 日予算 | ±50%以内 | 急激な変更は学習リセットのリスクあり |
| 目標CPA | ±30%以内 | 段階的な調整で学習の継続性を保つ |
改善フロー
パフォーマンスに改善余地がある場合は、以下の順番で対応することを推奨しています。
- まず予算の増額を検討:データ量の不足が原因の場合、予算調整だけで改善するケースが多い
- それでも改善しない場合→目標CPAを段階的に調整
- クリエイティブやターゲティングの見直し:入札以外の要素も確認
自動入札は“設定して放置”ではなく、正しい条件を整える事で力を発揮する仕組みです。ガイドラインは、その条件を整えるための指針です。
まとめ
メルカリAdsの自動入札について、覚えて頂きたい事は3つです。
購買データに基づく予測精度
メルカリAdsは、実際の購買・本人認証データを使ってコンバージョン確率を予測しています。「興味がありそう」ではなく「買う確率が高い人」にリーチする仕組みです。
学習期間と運用設計
約2週間の学習期間を理解し、適切な予算とCPA設定でスタートすることが、自動入札の効果を最大化するためのコツです。
オークション単位の動的入札制御
自動入札は、オークションが発生するたびにコンバージョン確率を予測し、入札額をリアルタイムに決定します。この粒度の最適化は、手動では不可能です。
