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購買データが予測を変える ― メルカリAds自動入札の“精度”を支えるもの
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Auto Bidding Column Sumnail_Hong-Li san
2026.03.31
購買データが予測を変える ― メルカリAds自動入札の“精度”を支えるもの

メルカリAds PdMが語る、自動入札の“中身”

自動入札は「逆算」ではない

メルカリAdsの入札ロジックの本質

手動でCPCを調整する従来の運用から、機械学習による最適化へ。メルカリAdsの自動入札は、その転換を実現する機能です。

AutoBidding_Column内画像Hong-Li-san

株式会社メルカリ Mercari Ads Product Manager Hongli Zhao

自動入札は“目標CPAから逆算してCPCを出しているだけ”と思われることがあります。でも実際は、広告が表示されるたびに、そのユーザーがコンバージョンに至る確率を予測し、その期待値に基づいて入札額を決めているのです。

具体的には、入札価格は以下のように算出されます。

入札価格(Bid Price)=目標CPA×pCVR(予測コンバージョン率)

pCVRとは「この広告がクリックされた場合、どれくらいの確率でコンバージョンに至るか」を機械学習モデルが予測した値です。数式自体はシンプルですが、このpCVRを何のデータで予測しているかが、広告プラットフォームごとの成果の差を生む本質です。

メルカリだけのデータ 購買プラットフォームならではの予測精度

なぜメルカリAdsのpCVRは、他と違うのか

多くの広告プラットフォームは、ユーザーの検索履歴や閲覧行動をもとにターゲティングを行っています。「この人はスニーカーを検索した→スニーカーに興味がある」という推定です。

しかし、「興味がある」と「実際に買う」は全く違います。

メルカリは月間2,800万人以上が利用するマーケットプレイスであり、日々実際の購買行動が起きています。メルカリAdsの自動入札は、この購買データを使ってpCVRを予測しています。

検索履歴から“興味がある”ことは分かります。でも、“本当に買うかどうか”までは分かりません。メルカリでは実際の購買が毎日起きているので、“どういう人が、どんな商品を、いくらなら買うか”を事実ベースで学習しています。これが予測精度の根本的な違いです。

購買データがメルカリAdsの最大の武器

一般的なプラットフォームメルカリAds
分かること「スニーカーを検索した」「商品ページを見た」「スニーカーを\12,000で購入した」「月に2回、同カテゴリの商品を買っている
予測の質「興味がありそう」(推定)「購買意欲がある」(事実ベース)

メルカリには実際に何を買ったか、いくら払ったか、どのくらいの頻度で購入しているのかのデータがあります。これにより、「興味関心」ではなく「購買行動の傾向」に基づいた高精度な予測が可能になります。

購買意向シグナル “今まさに買おうとしている人”を捕捉

メルカリのアプリ内では、購買に至る前に特有の行動パターンが数多く存在します。例えば

  • 「いいね」:商品への関心を示すアクション
  • 「コメント」:商品に対する能動的なアプローチ

これらは代表的なシグナルの一部ですが、いずれも購買の直前に現れる行動である点が共通しています。

これらの行動は、“検索した”よりもはるかに強い購買意欲のシグナルです。今まさに買おうとしている人にリーチできるのが、マーケットプレイスのデータを持つメルカリAdsの強みです。

eKYC本人認証データによる属性の確かさ

一般的なプラットフォームメルカリAds
年齢・性別自己申告 or Cookie推定本人確認(eKYC)ベース
精度推定(実際とは異なる可能性)認証済み(正確

メルカリではeKYC(本人確認)が導入されているため、年齢や性別といった属性情報が自己申告や推定ではなく、本人認証ベースのデータに基づいています。ターゲティング精度の土台が他のプラットフォームとは異なります。

自動入札だからできること 手動ではたどり着けない最適化

手動運用との最大の違いは、ユーザーと広告の組み合わせごとに、購買データに基づいた入札判断ができることです。

①オークション単位の動的入札制御

手動運用では、広告グループ単位で一律のCPCを設定します。自動入札では、ユーザーがメルカリで商品を検索・閲覧するたびにオークションが発生し、そのユーザーの購買データと広告の特徴をかけ合わせてpCVRを予測し、入札額をリアルタイムに決定します。

ユーザー×広告の組み合わせは膨大であり、この粒度の最適化を手動で行なうことは物理的に不可能です。

②運用工数の削減

入札単価の調整作業から解放されることで、運用者は戦略設計やクリエイティブの改善に集中できます。

運用者の方には、入札調整の作業から解放されて、戦略設計やクリエイティブの改善に集中してほしい。自動入札は、そのための基盤です。

自動入札の効果を最大化する運用方法

Product Deep Dive_Auto Bidding Honli-san picture

学習フェーズ なぜ約14日間が必要なのか

自動入札に切り替えた直後、パフォーマンスが一時的に不安定になるケースがあります。これは、pCVRの予測精度がまだ安定していない「学習フェーズ」にあるためです。

学習フェーズ(約14日間)
・クリック/CVデータを蓄積中
・予測の精度が安定するまでに時間がかかる
・十分なデータに達するまで配信をブースト

最適化フェーズ
・pCVRの予測精度が安定
・成果の良い広告に高CPCを自動配分
・無駄な配信が抑制される

学習期間中に大きな設定変更を行うと、モデルがリセットされる可能性があります。アルゴリズムに”考える時間”を与えることが、最終的な成果を最大化するコツです。

自動入札を活かすための運用ガイドライン

日予算の目安

広告種別推奨日予算理由
Product Ads(商品広告)目標CPAの10倍以上商品数が多く、広告グループあたりのデータ分散を補うため
Infeed / Display Ads目標CPAの5倍以上学習期間中に十分なクリック・CVデータを蓄積するため

予算が小さすぎると、機械学習モデルが有意なデータを得られず、学習期間が長引いたり予測精度が安定しない原因になります。

設定変更のルール

項目変更上限(1回あたり)注意点
日予算±50%以内急激な変更は学習リセットのリスクあり
目標CPA±30%以内段階的な調整で学習の継続性を保つ

改善フロー

パフォーマンスに改善余地がある場合は、以下の順番で対応することを推奨しています。

  1. まず予算の増額を検討:データ量の不足が原因の場合、予算調整だけで改善するケースが多い
  2. それでも改善しない場合→目標CPAを段階的に調整
  3. クリエイティブやターゲティングの見直し:入札以外の要素も確認

自動入札は“設定して放置”ではなく、正しい条件を整える事で力を発揮する仕組みです。ガイドラインは、その条件を整えるための指針です。

まとめ

メルカリAdsの自動入札について、覚えて頂きたい事は3つです。

購買データに基づく予測精度
メルカリAdsは、実際の購買・本人認証データを使ってコンバージョン確率を予測しています。「興味がありそう」ではなく「買う確率が高い人」にリーチする仕組みです。

学習期間と運用設計
約2週間の学習期間を理解し、適切な予算とCPA設定でスタートすることが、自動入札の効果を最大化するためのコツです。

オークション単位の動的入札制御
自動入札は、オークションが発生するたびにコンバージョン確率を予測し、入札額をリアルタイムに決定します。この粒度の最適化は、手動では不可能です